CHANEL元取締役 中川 保孝氏が語る、挑戦と共創の軌跡。vol.1

常識に囚われず、革新を起こし続けてきた一流たちのスピリットに触れるTAKANOME MAGAZINE。
今回話を聞いたのは、名だたるラグジュアリーブランドのマネージャーを経て、Mont Blanc社長、CHANEL元取締役を歴任された中川 保孝(なかがわ やすたか)氏。引退後の現在でも「ヒエラルキーのない組織」というユニークな視点を持ち、若手経営者を支援する取り組みを精力的に行うなど挑戦し続けている。組織のトップとしての信念、そして多くのラグジュアリーブランドを経験する中で培われた、文化への想いについて、鷹ノ目創業者である平野が伺った。
アメリカで知った、心のままに発言をするスピリット
鷹ノ目創業者 平野(以下 平野):中川さんは20代の時にアメリカに留学をされていますが、きっかけは何だったのでしょうか?
中川氏:実は僕、父が台湾人で、母が日本人なんです。大学4年生で研究室に入り、いろんな企業に履歴書を出したのですが、外国人だからどこも通りませんでした。80年代くらいのことですから、外国籍というだけで弾かれてしまうのが普通だったんです。
それだったらアメリカに行きたいと思いました。70年代はアメリカへの憧れが強かった時代でした。みんな自由な風土に魅せられていた。
平野:僕もアメリカに行っていた時代があります。外国に行くと自分の中に日本との比較対象ができると思うのですが、日本の常識が常識ではないと思った点はありましたか?
中川氏:日本だとこれを言ったらこう思われてしまうかなとか、相手を考えて忖度してしまうことが多いと思います。でもアメリカは、思っていることを自由に発言して意思疎通をする方が良い、という環境でした。
なので自分自身に囚われる必要はないし、心のままに発言して良いんだと学びました。
あとディベートの文化がすごく重要だと思いました。賛成であれ反対であれ、自分が振られた立場でディベートをするというのはすごく面白かったです。
平野:日本はどちらかというと、相手のことを思いやりながら意思決定をしますよね。アメリカは自分がこうしたい、相手もこうしたいというのがまずあって、話し合って中間地点を探そうという発想が多い気がします。
組織を統括する中で生まれた、上下を作らないという想い
平野:組織でトップとして働いているといろいろなことが起こると思います。その中で中川さんがこれだけは譲れないという信念はありますか?
中川氏:信念というほどのものを僕は持っていないのですが、唯一あるとしたら、上下を作りたくないということです。みんながフラットであることが理想です。
ツリー構造で上から指令をした方が、人間としては受け入れやすいと思うんです。ただそのやり方は、僕は古いと思いますね。上司部下という上下があるのではなく、それぞれ役目が違うだけだと僕は思っています。だから部下とは言わないようにしていました。みんな「さん」付け。
さらに僕は地球をイメージした球型の組織を作ろうと思ったんです。球の真ん中に会社のビジョンを据え、表面にメンバーがいるというイメージです。そうするとビジョンとメンバーの距離は、みんな平等になります。
平野:どうしてその考えに至ったんですか?
中川氏:「僕がやるんだ!」 と意気込んで、とあるプロジェクトを無理矢理進めたことがあったんです。そしたら反発がすごくて。よくよく話を聞いてみたら、考えには賛成だけれど、やり方が受け入れられないということでした。
そこから自分がどうしたいのか考えていった時に、メンバーにはコンフォータブルな状態でいて欲しいし、自分ごととして一緒に考えてもらった方が組織としても強いと思い直しました。
ビジョンを元にメンバーが自分の考えを打ち出していけば、もちろん失敗もあります。でも失敗は大いに歓迎です。
アメリカでの経験や、外資系の企業の中で国籍の違う人など多様な考えに触れて働いてきたことが、こういった組織づくりにも生かされているかもしれないですね。
※後編に続く。
▲中川 保孝 1987年よりPCD(Diorの香水化粧品法人) にて免税販売の責任者、Lacroixの香水の日本ローチングを行い、その後Cartier(現Richemont Japan)にて時計ビジネスマネジャー、リテール部門GM、Mont Blanc社長を合計12年間で歴任、その後CHANEL日本法人の時計宝飾部門の設立から15年間携わる。
TAKANOME(鷹ノ目)について
F1のレーシングカーを作るとき、コストを考えながら車を作ったりはしない。とにかく速さのみを求めてその時代の最高の車を作る。TAKANOME(鷹ノ目)の開発もいわばレーシングカーを作るかのようにとにかく「うまさ」のみを追求するとの信念のもと、幾度にも及ぶ試行錯誤の上で完成した、極上の日本酒。
<販売日>米作りからラベル貼りまで、全て「手作業」によって造っているため、生産量が限られています。ご迷惑をお掛けしますが、週に1度のみ(毎週水曜21時〜)数量限定で販売いたします。
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Text: Megumi Saito
Photo: Hiroyuki Tamagawa
Structure: Sachika Nagakane
