「木と、生きる。」 ありのままを彫り出す木工家・浦上陽介 Vol.02

「木と、生きる。」 ありのままを彫り出す木工家・浦上陽介 Vol.02

浦上氏にしかできない木工作品の数々は、どういったところからインスピレーションを得ているのだろうか。

「いろいろあります。会話でしょ、古いもの、新しいもの、子供、動物、植物、石も…。

よく言うんですけど、つまづいたものに何かがあって。それはなぜひっかかったのかと耳を傾ける、それを毎日続けています。モノづくりに関わっている人は、みんなそうなんじゃないでしょうか」

日常にあるもの、すべてが制作のヒントになっているというが、それをいかに作品に投影していくのかと尋ねたところ、どうなんでしょうか…と一呼吸おいて答えてくれた。

 「無意識に、掘るものに出てくるのかなと。いまはそれを出し切れない部分もあるんです。木とその時の思いが、どこか絶対にぴったりと重なる部分があるはずなので、そのためにも、もっと木のことを知りたいなと思っています」

 木工作家として独立して6年。どんどんと作品の幅が広がっているのは、木を知れば知るほど、器だけでは表現しきれないものがあることが大きいそうだ。

 

 

 「見つけたものを、ただのお皿では表現しきれないから。いろいろやりたいというわけではなくて、『木』なんですよ。そこさえぶれなければいいんだと思っています。最初は生活のために、好きなものばかり作るわけにはいかないかったのですが、いまは新しいことができるようになって。でもね、本当はそんなこと関係なくて、ただやりたいんですよ」

 見たことないことをやりたい。道なんていくらでも作れるとも付け加えた。

 

 最近では海外へ作品を出品することも増えた。木工の文化に対して固定概念がなく、新しさを評価する傾向があり海外では評価されやすいのだという。

定番品はなく、年に4、5回の個展に合わせて毎回新たな作品をつくりだしている。

 「前の作品が良かったからまた同じようなものを作ってほしいと言われることもありますが、あと10個作ってほしいと言われてもつくれないんです。その瞬間にできたものがいいんですよね。そのあとに同じものをつくろうとしても、全然ちがうんですよ。同じことをやってもつまんないし」

 常に木と向き合い、空いた時間を見つけては、試作を繰り返しているしているのだそうだ。なぜそこまで没頭できるのかと思うが、それこそが木工の楽しさでもあるのだという。

 「作業をしている間は、何を言われても聞こえなくなってしまいます。個展の2か月前くらいはずっと木と向き合って。集中してしまうと、からだを壊すまでやってしまうときもあります。本当に展示前はモードに入って、子供たちも近づかないですよ。納品が終わったら、もうすっかり気が抜けてしまいますけどね」


個展の前はいわゆる”ゾーン”に入ってしまうのだ。一方で不安に襲われることもある。

「焦りもあるし、高まっているというのもあるし、いろんな感情が混ざって、1週間前になると怖くなることも。作品が受け入れられなかったらどうしようとか。何を言われるかなとか。厳しい方もいて…。でも、言われたほうがうれしいです。自分の作ったものなんていいわけがないんだから」

 最後に、今後の展望について聞いた。

「やりたいことはたくさんあります。まず工場を作らないといけないし、山を手入れしたいし。その瞬間瞬間思うことを必ずやり続けたい。いま自分ができるペースでやり続ければ、何かできるんじゃないかと。全然焦りはないです」

 

 

TAKANOME オリジナル酒杯プレゼントキャンペーン実施

 

 

今回、伝統的な木工の技術に敬意を持ちながらも自身を追求し新たな道を切り拓いていく浦上氏と、TAKANOMEビジョンが大きく重なりコラボレーションが実現しました。

制作した作品は、天然木に近い手触りで、滑らかな印象に仕上げ、内側に銀箔を施した酒杯で、色合いはTAKANOMEのモチーフと同じ黑

木と対話するように向き合い、物作りをする浦上氏の作品を手に入れられる機会をぜひお見逃しなく。

 

浦上氏コラボレーション作品応募方法詳細


■応募条件:下記日程にて「TAKANOME / 鷹ノ目」を購入。購入者の中から抽選で9名様にプレゼント


■日程:2023年1月25日(水)、2月1日(水) 21:00~

■販売場所:TAKANOME 公式サイト
※当選者した際、作品は選べませんのでご了承くださいませ

 

 


TAKANOME

F1のレーシングカーを作るとき、コストを考えながら車を作ったりはしない。とにかく速さのみを求めてその時代の最高の車を作る。TAKANOME(鷹ノ目)の開発もいわばレーシングカーを作るかのようにとにかく「うまさ」のみを追求するとの信念のもと、幾度にも及ぶ試行錯誤の上で完成した、極上の日本酒。


<販売日>米作りからラベル貼りまで、全て「手作業」によって造っているため、生産量が限られています。ご迷惑をお掛けしますが、週に1度のみ(毎週水曜21時〜)数量限定で販売いたします。

飲む前に知って欲しい、鷹ノ目開発ストーリーはこちら
鷹ノ目の購入はこちら

 

 

Text:Mihoko Matsui
Photo:Akira Yamaguchi
Structure: Sachika Nagakane

 

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