好きなものを、純粋に、どこまでも突き詰める。ガラス作家・波多野裕子氏

好きなものを、純粋に、どこまでも突き詰める。ガラス作家・波多野裕子氏

自分の好きなことを、とことん追求して極めていく。それが、良いものづくりにつながる。
波多野氏の工房を訪れて、そんな当たり前のことに改めて気づかされた。

波多野裕子 ガラス(パート・ド・ヴェール寄りのキャスティング)で主にうつわやランプシェードを制作する。早稲田大学第一文学部卒業後、1993年より陶芸を始め、2004年に彫金を始める。2008年にパート・ド・ヴェールによる作品を発表。


根底にあるのは日本の伝統工芸への憧れ

微妙な色合いが独特の景色を作り出す波多野氏のガラス。その作品の魅力は、日本だけでなくいまや海外にも伝わり、国内外で展示会などの活動を行っている。
そんな波多野氏が、ガラスの作品をつくり始めたのは、社会人になったあと趣味の一環で体験教室に行ったことがきっかけだったという。

 

小さなころから、日本の職人に惹かれていたという波多野氏。小学校では陶芸クラブにも所属していたそうだ。

「思い返すと幼少期には、砂場で土器をつくるような遊びをしていましたね。小さなころからテレビ番組などで見る職人の姿が単純にかっこいいなと憧れていたんです」

家庭の都合で、高校時代はアメリカで過ごすことになる。「日本から離れているので、自分のアイデンティティを探すという面もあって、その頃には日本の文化に強く興味を持つようになりました」

帰国後、大学では文学部へ進学した。日本の手しごとへの興味と憧れは尽きず、雑誌『民藝』を収集し、民藝館へ通うなど、波多野氏いわく「渋い学生」だったそうだ。

一方で大学でしかできないことに挑戦しようと、舞台美術研究会に所属した。そこではジャズコンサートやコンテンポラリーダンスの舞台で照明を担当する。

「今思えば、私の好きな色がそのときの記憶から形成されているのかもしれません。普通は色を考える時に白背景で考えますが、照明の世界は黒背景なんです。“闇の中に光がどう入るか”という基準で、作品にグレー系が多いのも、その時の感覚が非常に強いのかなと思います」

偶然に出会った作品からパート・ド・ヴェールの世界へ

大学卒業後は、仕事の傍ら、趣味で陶芸教室に通い始めた。陶芸教室は登り窯を使用するなど、一般の教室ながら本格的な内容でいつしか初心者クラスの指導を担当することになった。それでも作家になろうという考えはなかったそうだ。

陶芸を続けるうちに別の工芸にも触れてみたいと考え、今度は彫金を習い始めた。
そこからさらに日本工芸への興味は増し、さまざまなワークショップに参加していた。そんななかで、訪れたクラフトフェアで出会ったのが『パート・ド・ヴェール』の作品だ。

「その作家さんが誰だったのか、今となっては分からないのですが、どこかから発掘されたような不思議な作品で、これは何ですかって聞いたらパート・ド・ヴェールですと言われました」

その作品が心に残り、自分でも挑戦しようと教室を探した。

最初に行った教室では、簡単な工程だけ教えてもらい、先生がほとんどの部分を仕上げてしまった。今度は別の教室に行ってみたところ、まったく逆で、どこまでも好きなように仕上げて良い、と言われた。

そこで、ガラスを削ることを覚え、すっかりのめりこんでしまったのだという。

教室で覚えたことを基本に、自身で制作をする際に、波多野氏は、陶芸の経験をいかし「ろくろ」を用いてガラス作品用の原型を制作した。

出来上がった作品は、『工房からの風』という野外展覧会に出品した。

「ガラス作品で陶芸の雰囲気もあるというのが珍しがられて、多くの人に声かけをいただいたんです。そこからは、お仕事としてガラス作品をつくることに繋がっていきました」

その作品展から15年、今はガラス作家として活躍の場を広げ続けている。

 

ガラスと長い時間向き合う、だからこその楽しさ

波多野氏の作品づくりは、まず、ろくろで原型を作るところから始まる。その翌日に原型を削り3日目に石膏で型取り。そこにガラスの粉を詰めて2日間ガラスを焼く。焼きあがったものを磨いて仕上げるという、手間のかかるものだ。

 波多野氏が、そこまでガラスの世界に引き込まれたのは、「好きなものをどこまでも突き詰める」という性格が、作品づくりと見事に合致したからだ。

「陶芸は、窯に入れたらもう窯の神様にお任せするしかないんですが、ガラスは自分で最後の最後まで削ることでコントロールができるんです。

薄くしたければもっと削ればいいし、角度も変えられる。型づくりから色調整、焼き上がってからも、何度も何度も手を入れることができるのが自分には合っていました」

友人からは「マニアックだね、そこまでやらなくてもいいのに」と冗談交じりに言われるそうだ。

「道具も、海外の通販サイトまでチェックして、いろいろと集めてしまうんです。個人の作家でこれだけの道具をそろえているのは珍しいのではないでしょうか」

でも、それが楽しくてしかたがないのだとも。

 

作品づくりの基準は、自分が見て、触れて「しっくりくるかどうか」。

そのため、最初の型づくりの段階から最後まで、そのときそのときの波多野氏の想いや好みがそのまま作品となっていく。何度も何度も修正し、自分の気持ちを探っていく作業だ。

また、それでも毎回新しい発見があるのがガラスの魅力なのだという。


いまだに尽きない日本文化への深い思い

そのように、のめりこむタイプだという波多野氏だが、いまだにガラス以外の日本の工芸品にもさまざまに挑戦しており、茶道具が好きだったことから振り出し(※茶菓子を入れる小さないれもの)も制作している。

「深く知れば知るほど、形とか使いやすさもあるので、焦らず、ゆっくりチャレンジしていきたいなと思いますね」

一点に打ち込みながらも、柔軟にほかのものを受け入れるしなやかさも持ち合わせる波多野氏は、コラボレーションにも積極的に取り組んでいきたいという。

「今まであんまりコラボとか好きじゃなかったんですよね。一人でひたすら黙々と作品づくりをしているのが向いていると思っていたんです。

でも、昨年初めて和紙の作家さんと香りの作家さんと一緒に作品をつくってみたら結構楽しくて。それ以来コラボレーションにも前向きに取り組んでいます。たとえば、振り出しの網袋も装身具の作家さんに作ってもらったりとか、バリ(削る前のガラス)を加工してアクセサリーにしていただいたり。

他の人といろいろ作ることで、また脳の違うところが刺激されて、自分の作品に戻ったときに違うものが見えてくるんです」


 

「私の作品は、日本酒ととても相性がいいんです。ガラスが濡れることで表情が変わって、また見え方が変わるので、お酒と一緒に楽しんでいただけたら。

TAKANOMEは噂には聞いていましたが、本当に香りがよくて、おいしいですね。友人たちとこのアトリエで一緒に飲みたいと思います」

 

 

TAKANOME

 

F1のレーシングカーを作るとき、コストを考えながら車を作ったりはしない。とにかく速さのみを求めてその時代の最高の車を作る。TAKANOME(鷹ノ目)の開発もいわばレーシングカーを作るかのようにとにかく「うまさ」のみを追求するとの信念のもと、幾度にも及ぶ試行錯誤の上で完成した、極上の日本酒。



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TAKANOME MAGAZINE

「常識に囚われず、革新を起こし続ける一流を訪れ、その哲学に触れる」というコンセプトのもと、独自取材を行うTAKANOME MAGAZINE。


TAKANOMEの哲学である『常識に囚われない「うまさ」のみの追求』という視点で一流の哲学を発信し、読む人たちの人生を豊かにすることを目指します。

 

Text: Mihoko Matsui
Photo: Masaru Miura
Structure: Sachika Nagakane 

 

 

 

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