「木と、生きる。」 ありのままを彫り出す木工家・浦上陽介 Vol.01
木と対話しながら、漆や箔を施した作品を生み出す木工家・浦上陽介氏。
その作品は、他の木工作品には持ち合わせない佇まいで、多くの人を魅了する。
まだ雪深い季節、宮城県蔵王町にある浦上氏の工房を訪れ、浦上氏にその作品の生み出される背景を聞いた。
▲浦上陽介(うらかみ・ようすけ)
1985年 長崎県五島列島生まれ。桑沢デザイン研究所卒。在学中から家具工房で約10年間修業。2016年に独立し、宮城県蔵王町にて木工作家として制作を行う。
導かれるように木工家の道へ
「実は木工家を目指したことは一度もないんです」
宮崎県蔵王町。
こけし工房の片隅にある作業場で、 開口一番そう聞いて驚いた。では、どのようにして今のような作品づくりに至ったのだろうか。
思い返すと子どものころから、絵をかいたり手で何かをつくったりするのが好きだったという浦上氏、高校生のころには本格的にデザインの勉強をしたいと考えるようになった。
一度は一般の大学に入学したがすぐに辞め、デザイン系の専門学校に入りなおした。
グラフィックや3Dなども幅広く学んだが、自分の手でつくって形になるものに惹かれていく。しかし学生という身では、レベルの高いものに触れられる機会は少ないとも感じていた。
「そこで興味があった家具職人を訪ねました。あまり深い考えはなかったのですが、親方から『お前暇なら手伝え』って声をかけられて。流されるようにそのまま手伝うことになりました」
その日から、専門学校と家具の工場、両方に通う日々が続いた。
卒業が迫ったときに就職をすることも考えたが、新しい会社でイチから勉強しなおすよりも、親方のもとで修業を続けたほうが良いと思い本格的に弟子入りをした。
その家具職人のもとで10年ほど下積みを重ねたのちに、独立をすることになった。その時も「家具職人になろう」「木工家になろう」など、何か決意があったわけではないそうだ。
「こう言うとよく怒られるのですが、家具や器おもちゃなど、作るもので分けて考えてはいなくて。自分の仕事は“木”という素材があって、最後の最後に少し触っているというくらいの感覚です」
とにかく“木”に触れられればよかった。
その頃は結婚をして子供も一人生まれていたため、すぐに仕事を始めないといけない状況だったが、あてもなく妻の出身地であった東北方面へ車を走らせた。たまたま入った温泉で身の上話をしたところ、地元のこけし職人の方から「ここでよければすぐに使っていいよ」と声をかけてもらえた。
そうして借りることになったのが、この工房の一角だった。
「小さなスペースでできることに限りがあるので、大きいものは作れないんです」
最初は生活のために木工の器などを作っていたが、次第に個展の話が来るようになり、活動の場が広がっていく。
すべては偶然であり必然だったのではないか。まるで引き寄せられるように、木工家への道が開かれていった。
木の表情をそのままいかす
木の特徴や表情、そして仕上げに塗る漆の特徴を生かせるということを第一に、そこに浦上氏にしかできなないデザイン性や、一見すると木に見えないような不思議な質感に仕上げられていく。
「もちろん使いやすさや主張のないもの、価格帯が低いというのも大事なことではあると思いますが、それは僕じゃなくてもできることじゃないですか。こういったことに細かくこだわっているので面倒くさいと言われることもありますけどね」と笑いながら話す。
作品が生み出される作業の様子を見せてもらうと、真っ暗な工房にライトを1つだけ灯して、まるで木と対話するように、向き合っている。
「光をすごく意識しています。基本的には使う時間よりも眺めたり、置いておいたりする時間のほうが長いですよね。だからこそ、佇まいや光の当たり方での見え方を常に確かめながら作業します。周りが暗いほうが、光があたったときのイメージをしやすいんです」
家具の下積み時代には伝統から見出された木の扱い方をとことん教わった。
「木には動きがあって、沿ったり曲がったりするので、木のどこを切り取るかとか、そのあたりは伝統があり、習得したものなので、からだに染みついています」
ただ、独立してからはほとんどの道具は独学で技術を高めているのだそうだ。
「今使っている道具ってほとんど家具の修業では使ったことがなくて。でも簡単なんですよ。とげば切れるんで。その理屈さえわかっていれば、できます。簡単です。わざと切れない刃物を使う時もありますが、基本は切れればなんとかなる。あとはからだを使いながら、覚えているんです」
浦上氏がそこまで木にこだわるのはなぜかと問うと、
「木と相性がいいんですよ」とひと言。
木に魅せられ、触れれば触れるほど関係性が深まっていく。
木工家・浦上氏だからこそ言える言葉だろう。
TAKANOME オリジナル酒杯プレゼントキャンペーン実施
今回、伝統的な木工の技術に敬意を持ちながらも自身を追求し新たな道を切り拓いていく浦上氏と、TAKANOMEのビジョンが大きく重なりコラボレーションが実現しました。
制作した作品は、天然木に近い手触りで、滑らかな印象に仕上げ、内側に銀箔を施した酒杯で、色合いはTAKANOMEのモチーフと同じ黑。
木と対話するように、向き合い物作りをする浦上氏の作品をゲットする機会をぜひお見逃しなく。
浦上氏コラボレーション作品応募方法詳細
■応募条件:下記日程にて「TAKANOME / 鷹ノ目」を購入。購入者の中から抽選で9名様にプレゼント
■日程:2023年1月25日(水)、2月1日(水) 21:00~
■販売場所:TAKANOME 公式サイト
※当選者した際、作品は選べませんのでご了承くださいませ
TAKANOME
F1のレーシングカーを作るとき、コストを考えながら車を作ったりはしない。とにかく速さのみを求めてその時代の最高の車を作る。TAKANOME(鷹ノ目)の開発もいわばレーシングカーを作るかのようにとにかく「うまさ」のみを追求するとの信念のもと、幾度にも及ぶ試行錯誤の上で完成した、極上の日本酒。
<販売日>米作りからラベル貼りまで、全て「手作業」によって造っているため、生産量が限られています。ご迷惑をお掛けしますが、週に1度のみ(毎週水曜21時〜)数量限定で販売いたします。
飲む前に知って欲しい、鷹ノ目開発ストーリーはこちら
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Text:Mihoko Matsui
Photo:Akira Yamaguchi
Structure: Sachika Nagakane