重力に抗う美しさ 気鋭の華道家・上野雄次が生み出す『花いけ』の世界

重力に抗う美しさ 気鋭の華道家・上野雄次が生み出す『花いけ』の世界

花をいけることは、自由で無限の広がりがある。

上野雄次氏の“花いけ”の世界に触れると、自然とそう思えてくる。

華道家として、静かに空間に佇む花をいける一方で、激しくときに破壊的なライブ・パフォーマンスでも知られる上野氏。この日、駒沢公園にほど近い、「ギャラリー櫟」(くぬぎ)で生け花の作品展示が行われていた。


▲上野雄次・1967年生まれ。1986年より華道を学び始め、2005年より「花いけ」のライブ・パフォーマンスを開始。コムアイ(水曜日のカンパネラ)や矢野顕子、ジェフ・ミルズなど、国内外のアーティストとのコラボレーションでも知られる。著書に花いけの勘どころ (誠文堂新光社)がある。

全ての人が持つ願望を「美」へ

今回はギャラリーと併設の伊佐ホームズのモデルハウス、3箇所に生け花が展示された。花と木の持つしなやかさ繊細さとダイナミックさが融合し、空間には酷暑を忘れさせるような静けさが漂う。

上野氏にこういった作品の生まれる背景を聞くと、より作品の味わいが深まっていく。

 

「生け花のヒントにしているのは山に行ったときに見た景色や、自分が感動したもの。例えば流木が川に積みあがって、1本だけ草が生えているのがかっこいいと思ったら、それを記憶しておいて、なぜ自分にとって感動するものだったのかというのを分析していく。それを自分の中に落とし込むと、景色を切り取って作品にできるようになってくるんです」

 

 

そうして分析していくうちに、造形物として美しいバランスとは、いかに鮮やかに重力に逆らうか、ということではないかと考えた。

「美しさって自分のなかに抱いている願望がベースで、願望と同じようなものが目の前にあらわれたときに、美しいと感じるんです。重力から解き放たれたいという願望があるからこそ、重力から解き放たれているかのように見えるものに惹かれる。バレエダンサーを美しいと思う気持ちもそう。つま先だけで立って、さらに跳んだり回ったりするわけじゃないですか」

 

 

そういった意識のうえで、作品を作る際には、先入観をもたないことを大切にしている。

「先入観は過去に起きた事象に基づいたもの。経験はもちろん重要ですが、それよりも今どうすべきか、どうあるべきか。目の前にある器や花や空間をつなぐのが自分の仕事なのだと思っています」。

 

 

運命は1枚のポスターから

京都生まれの上野氏は小学校に上がるタイミングで大阪へ、小学4年生で鹿児島へ移り住んだ。工業高校の建築科を卒業後、一旦は東京のゼネコンに就職したものの1年も経たず退職。

「もともと絵を描いたりする表現活動が好きでデザインを勉強したいという気持ちが強かったんです。本当はデザインの学校に行きたくて入試を受けたのですが落ちてしまって。路頭に迷っている間に、求人誌を見ていたら、グラフィックデザイナーの募集がたくさんあって、アシスタント的な仕事からデザインを学ぼうと考えました」

 

 

しかし、机上での勉強は得意ではなく、小劇場の芝居や美術館、ギャラリーなどへ出向いて、作品を観て吸収するように。

そんなある日、映画を観に行った有楽町マリオンのエスカレーターを下っているときに、1枚のポスターが目に留まった。

「田中一光氏デザインのポスターがとにかくかっこよかったんです。それで内容は知らずに、行ってみたらインスタレーション作品の展示会でした」

 

 

展示されていたのは勅使河原 宏氏の代表作でもある竹のインスタレーションだった。通路の片方の壁に竹が帯状に連なっている作品に圧倒され、気づけば2、3時間はその空間に居た。

「そのときは、それが何かよくわかりませんでしたし、正直に話すと『勅使河原』という名前も読めませんでした。周囲の人の会話から『生け花』だということは、なんとなく伝わってきました」

インターネットも普及していない時代、家に帰り本などで調べてそれが華道の作品であることを知った。

「自分が知っている華道とは違う、何かすごいことが起きているなという衝撃が走って、すぐにやってみたいと思いました。芝居や映画は、なんとなくその世界について想像できますが、華道というのは想像もつかない、だからこそやってみたい、と」

 

一瞬を切り取ることがライブ・パフォーマンスへ

門戸が開かれている華道界は、素人でもすぐに受け入れてもらえた。基本の稽古を受け、1年ほどで公募展に作品を出す誘いがあり、そこから表現活動が始まっていった。グループ展や個展と活動するうちに、どんどんと華道の魅力にのめりこむ。

「花は刻一刻と変化する。今このときしかないという一瞬一瞬に、生きている実感を得られてそれが喜びだったんだと思います」

この、「今」という感覚が、ライブ・パフォーマンスにもつながっていった。

 「花は一度切ってしまうと、後戻りできない、それってライブだなと。判断の鮮やかさ、速さも含めて花をいけることが魅力だと感じたんです」

 

 

人前で花をいけるデモンストレーションは行っていたが、生け花を完成させることが目的ではないパフォーマンスを20年ほど前から始めた。また、その際に「花いけ」という言葉も生まれた。

「ライブ・パフォーマンスはもちろん『生け花』でもあるのですが、古いイメージから解き放たれたいと思いました。フラワーアレンジメントという言葉もありますが、これだとまた印象が違ってしまいます。花を生ける行為や空間、作品、すべてを包み込むような日本語が無いかと考え、行きついたのが『花いけ』という言葉でした。もともと華道では花器の別名として使われていた言葉でしたが、それを動詞として使うようにしたところ徐々に浸透していきました」

最近では、「花生けバトル」がテレビでとりあげられることもあり、多くの人に知られる言葉となっている。

 

 

全ては華道家としてやるべきこと

インスタレーションも印象的なものが多くある。この「暴走花いけ号」もそのひとつだ。自家用車を利用し、自身の車以外の作品を合わせると11台目となる。きっかけは2011年の震災で、鎮魂や邪気を払う意味で、お神輿を担いでいるようなイメージを表現している。

 

 

また、それとは別に、報道を含めて個人のスマホがメディアになっていくというのを感じたことも大きいそうだ。社会情勢と表現活動を重ね合わせたときに、ギャラリーや美術館だけではなく、普通の生活の中に出向いて人の気持ちを惹きつけるものにしたかったのだという。

「この車で、普通に買い物なんかにもでかけます。これは何ですか、と話しかけられることも多いですね」

また、最近では花と人を重ね合わせた彫刻作品「花のすがた」も発表。彫刻も華道で使われる道具だけで仕上げたそうだ。

「彫刻も、パフォーマンスも、すべて華道家としてやるべきことをやっています。花をいけるという行為は、想像がつかないくらい広がりがあるんです」。

そう聞くと、上野氏のこれからの活動にも期待してしまう。

「根本的にはこれからも良い花を生けつづけていきたいなということでしかない。良い花とは、多くの人の共感を得られて、仕事として鮮やかで、無駄がないもの。それは、自分がすべきことをわかっているからこそできるということでもあります。そして、花をいけることは言葉のいらない世界です。この文化を通して多くの人とつながって、文化を通した世界平和に貢献できたらそれ以上のことはありません」。

 

撮影協力

駒沢住宅・ギャラリー櫟 

住宅の設計・施工を行う伊佐ホームズが「住宅建築は総合芸術である」という考えのもと暮らしの提案を行う空間。工芸、美術、書道、骨董など多岐にわたる展覧会を企画、運営。

『花選び 器選び』※上野氏の展示は終了。

会期:令和4年7月30日(土)〜8月21日(日) ※8月11日(木)〜16日(火)夏季休暇 
時間:10時〜17時
休廊:水曜
入場料:無料(予約不要)
住所:東京都目黒区東が丘2-13-25 
TEL:03-5712-5513
公式サイト

 

 

お酒では日本酒が一番好きです。TAKANOMEはまず香りが華やかでフルーティで驚きました。でも、飲みやすいだけではなく、きちんと酒らしい味わいがありますね」

 

 

 TAKANOME MAGAZINE

「常識に囚われず、革新を起こし続ける一流を訪れ、その哲学に触れる」というコンセプトのもと、独自取材を行うTAKANOME MAGAZINE。

TAKANOMEの哲学である『常識に囚われない「うまさ」のみの追求』という視点で一流の哲学を発信し、読む人たちの人生を豊かにすることを目指します。

 

 

TAKANOME

F1のレーシングカーを作るとき、コストを考えながら車を作ったりはしない。とにかく速さのみを求めてその時代の最高の車を作る。TAKANOME(鷹ノ目)の開発もいわばレーシングカーを作るかのようにとにかく「うまさ」のみを追求するとの信念のもと、幾度にも及ぶ試行錯誤の上で完成した、極上の日本酒。

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TBS報道番組 "THE TIME"で紹介されました。 

一万円超えでも即完売!SNSで話題の日本酒「TAKANOME」のさらなるうまさに酔いしれて  (no-ma)

高級日本酒『TAKANOME』が106週連続で完売 自社ECサイトで毎週水曜日に発売 (日本ネット経済新聞)

 

Text:Mihoko Matsui
Photo:Masaru Miura
Structure: Sachika Nagakane

 

 

 

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