「打つ。時を打つ。」銅板に命を吹き込む玉川堂の精神 玉川堂・山田 立氏

伝統工芸を絶やさないためには、その魅力を世に伝えていくことも課題となる。
1816年の創業以来、約200年にわたり鎚起(ついき)銅器を継承する『玉川堂』。鎚起銅器とは、1枚の銅板をたたきながら、形づくっていく技術で、文化庁と新潟県より無形文化財に認定されている。その『玉川堂』で番頭を務める山田 立氏は、自社のみならず燕三条地域の発展のための活動も執り行っている人物だ。
▲山田 立(やまだ・りつ) 1973年新潟県生まれ。県内の百貨店での勤務を経て、ものづくりの世界に魅了され、燕三条を代表する企業のひとつである『玉川堂』に入社。番頭として、自社のみならず、イベント運営などを通して燕三条の地域全体の発展に尽力している。
五感を震わせる、銅製品づくりの職人たち
創業200年を超える『玉川堂』は、前庭を有する築100年の建築で、国の登録有形文化財にも指定されている。
「まずはご覧いただくのが一番」とその風情あふれる建物内の工房を山田氏が案内してくれた。ここでは50年以上前からこの工場を開放し、一般の見学者も受け入れている。
「2012年は年間600人ほどでしたが、2019年には10倍の約6000人の見学者の方が訪れました。こちらで行っていることはずっと変わらないのですが、こういう時代だからこそ、音を聴く、においを嗅ぐ、と五感で体験することに飢えている方が多いのかもしれません。職人にとってもお客様から見てもらえるのはとても良い刺激になるんです」