「打つ。時を打つ。」銅板に命を吹き込む玉川堂の精神 玉川堂・山田 立氏

「打つ。時を打つ。」銅板に命を吹き込む玉川堂の精神 玉川堂・山田 立氏

伝統工芸を絶やさないためには、その魅力を世に伝えていくことも課題となる。

1816年の創業以来、約200年にわたり鎚起(ついき)銅器を継承する『玉川堂』。鎚起銅器とは、1枚の銅板をたたきながら、形づくっていく技術で、文化庁と新潟県より無形文化財に認定されている。その『玉川堂』で番頭を務める山田 立氏は、自社のみならず燕三条地域の発展のための活動も執り行っている人物だ。

山田 立(やまだ・りつ) 1973年新潟県生まれ。県内の百貨店での勤務を経て、ものづくりの世界に魅了され、燕三条を代表する企業のひとつである『玉川堂』に入社。番頭として、自社のみならず、イベント運営などを通して燕三条の地域全体の発展に尽力している。

五感を震わせる、銅製品づくりの職人たち

創業200年を超える『玉川堂』は、前庭を有する築100年の建築で、国の登録有形文化財にも指定されている。

「まずはご覧いただくのが一番」とその風情あふれる建物内の工房を山田氏が案内してくれた。ここでは50年以上前からこの工場を開放し、一般の見学者も受け入れている。

 

 

 「2012年は年間600人ほどでしたが、2019年には10倍の約6000人の見学者の方が訪れました。こちらで行っていることはずっと変わらないのですが、こういう時代だからこそ、音を聴く、においを嗅ぐ、と五感で体験することに飢えている方が多いのかもしれません。職人にとってもお客様から見てもらえるのはとても良い刺激になるんです」

山田氏の言葉を借りれば、まさにそこに広がるのはものづくりワンダーランドだ。

カンカンと銅を打ち鳴らす甲高い音が響くなか、欅のいすに座り黙々と作業を進める職人たちの姿。

すべて手作業で銅を打ち、茶器や花器を生み出していく。

200種類もある鳥口と呼ばれる鉄の棒や、金槌を使いわけ、銅板を打って打つ。その際、職人は見た目だけではなく音や振動で出来栄えを確認していく。多くの職人が耳栓をしているのは、耳を守るだけでなくほかの職人の音が入ると集中ができなくなるためでもあるそうだ。

銅は叩くと、どんどん硬くなっていく。そこで、次は火炉で焼いてやわらかくする「焼きなまし」を行う。この叩いて、熱で柔らかくし、また叩く、という工程を繰り返す

玉川堂の技術の高さがわかるのが、湯沸かしだ。本体と口を別に作って溶接をするのが一般的だが、1枚の板から急須や口もたたいて出す「口打ち出し」という技法を今でも用いる。溶接する場合と比べ、完成品の価格は10倍ほど。

「だからといってお茶の味わいの変化があるわけではないのですが、こんなことができる、という職人の意地のようなものでしょうか。購入する方も製品そのものではない価値を感じているようです」

彫金などの装飾をほどこし、形ができたら最後に着色をする。着色といっても塗るわけではなく、薬液や温度による色合いの変化を利用し、現在は9色出せる。これは世界でも燕三条だけの技術。

着色に使う薬液の入った水は、どんどん継ぎ足していくため、同じ方法でも全く同じ色にはならない。かつては職人が独立する際に、この水を持たせる文化もあったという。

着色して商品となるが、それで完成というわけではなく、使い続けるうちに少しずつ錆が進行していく。そんな経年変化も銅器の大きな楽しみだ。

終業後は工房が自由な創作の場に

銅は簡単に形を変えるものではない。職人になってすぐのころは、茶さじ1つ作るのも大変な苦労をするという。どのように技術を磨くのかと尋ねたところ、終業後は工房を解放しており自由に使えるため、そこで研鑽を積むのだそうだ。また、それぞれの創作活動をしても良く、終業後に自分の作品づくりをして個展を開く職人もいる。個人の活動が、仕事にいきるという良い循環も生まれている。

湯沸かしを一人で作れるようになってようやく一人前とされるが、そこまで10年~15年の歳月がかかる。何十年も勤め上げた職人が、1つも満足がいくものができなかったと言うほどの厳しい世界だ。

それでも毎年450名の学生から求人応募があるというので驚いた。特別にリクルートに力を入れているわけでもないという。

「『燕三条 工場(こうば)の祭典』の影響も大きいのではないでしょうか。燕三条の発信力が増して、町全体に若者、女性の職人が増えているように感じます」

「燕三条 工場の祭典」とは、2013年から開催されている、燕三条の工場を自由に見学ができるイベントで山田氏は4代目の実行委員長を務めた。最近では、イベントではなくても玉川堂のように見学を受け入れる工場が増えてきた。

「ものづくりを目の当たりにすると、納得感が出て、モノへの愛着も増す。こうした町工場を起点としたクラフトツーリズムをすることこそが、この技術を次の世代につなぐ一番の近道なのではないでしょうか」

取材の日にも、続々と地域の方が「玉川堂」に集まって来ていた。新潟県・中越地方に伝わる織物の原材料の展示と、それにまつわる映画の上映を行うのだという。地域のコミュニティであり、文化の発信の場にもなっている。

このように、玉川堂の取り組みは、自社さえ良ければよい、というものではない。銅器をつくる道具や、材料を調達する職人も減っている今、商品が売れるかどうかという以前の問題で、このままでは銅器を作れないということになりかねない。「玉川堂」のコーポレートスローガンは、「打つ。時を打つ。」 時を越えてこれから先も、ものづくりに関わるすべてが循環するように、つながっていく必要がある

「金属製品が好きな人たちが『まだ燕三条に行ったことないの?』と言われるくらいの世界にしたいんです。そこで単純に銅器を売って終わりではなくて、銅器を囲む、その時間や空間、人々の営みまでもコミュニケーションできればと思っています。銅器がお客様の手に渡った瞬間、そこからがはじまりなんです」

 

 TAKANOME 創業者 平野も大切なのは商品の空間や時間と語る。同じような考えに、共鳴する部分も多かった二人。

F1のレーシングカーを作るとき、コストを考えながら車を作ったりはしない。とにかく速さのみを求めてその時代の最高の車を作る。TAKANOME(鷹ノ目)の開発もいわばレーシングカーを作るかのようにとにかく「うまさ」のみを追求するとの信念のもと、幾度にも及ぶ試行錯誤の上で完成した、極上の日本酒。

<販売日>米作りからラベル貼りまで、全て「手作業」によって造っているため、生産量が限られています。ご迷惑をお掛けしますが、週に1度のみ(毎週水曜21時〜)数量限定で販売いたします。
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Text:Mihoko Matsui
Photo:Photo Studio USUTA
Structure: Sachika Nagakane

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