気取らず自由、心惹かれる益子焼 vol.02
常識に囚われず、革新を起こし続けてきた一流たちのスピリットを発信し、さらなる『文化の発展に貢献したい』との思いで立ち上がったTAKANOME MAGAZINE。
前編に続き、編集部がひきつけられるものを感じた益子焼作家を訪ねる。
益子の土がもっている素朴さ、そこに作家たちが思い思いに手を加える自由さが魅力の益子焼。全国各地から焼き物作家を目指して人が移り住んできた。そこから2代、3代と代替わりしながら親子で窯を受け継いでいることも多い。
前編でご紹介した鈴木 卓氏も2代目であるが、今回話をうかがった武田敏彦氏もまた、父が益子焼作家という環境で育った。
造形の美しい素地に、布目の技法で表情をつけ、そこに幾何学模様や線模様の赤絵をアクセントに加えているのが武田氏の特徴だ。作品、そして益子焼への思いについて取材した。
※前編はこちら
▲ルーシー・リー展で最優秀賞を受賞した作品
石の彫刻から益子焼作家へ
生まれた時から家に窯があり、学校の通学路にも陶器のお店がたくさん並び、お客さんが焼き物を買いに来ているというのが当たり前の風景。自然と焼き物に親しんできた。
「小さい頃のぼり窯の手伝いをしているとき、焼きあがった作品を見る父親がとても誇らしげで。こういうのが良い仕事なんだな、と」
父の背中を見ながら、陶芸家になることが自然なことに思えた。大学時代には石の彫刻を学んでいたが、その間にも、最終的には陶芸をやるんだという気持ちは消えなかった。
卒業後、しばらくは石の彫刻を続けたが、笠間まで通って石を掘るという日々にどこか無理を感じた。ふと「ものづくりに関しては、石でも粘土でも同じではないか」と転換する時期があり、そこからはきっぱりと石はやめて陶芸の道へ。
「ただ、やってみたらものすごく大変でしたね」と笑う。
東日本大震災でのぼり窯が半壊し、その修復作業に追われる時期もあり、別の仕事を並行することもあった。
▲自分たちで修復し、使用しているのぼり窯
また、作品づくりにおいても石と粘土の性質の違いに迷ったという。
「石の彫刻というのは大きさが決まっていて削っていって形を作る作業、粘土はその逆で膨らませていく作業。最初はとても戸惑いました」。
そこで、思い切って石のように削る作業で焼き物を作ってみよう、と四角く削って作品をつくった。それが伝統工芸展で入賞したのだ。
「彫刻でやってきたことが、いかせるんだと思って安心しました」。
両親との記憶から生まれた布目の作品
▲絵付けの際は大筆を分解して作った筆を使用する
いまは素地に蚊帳の布をあてて、布目をうつす技法の作品が主だ。そこにも、武田氏の両親への思いがあった。
「小さいころに父の実家では型染めの工場を営んでいて、布を織っているようすがとてもきれいだなと感じたんです。また、母は加賀友禅で有名な石川県の出身。真っ白な雪の中に色鮮やかな布が流れている光景を見たおぼろげな記憶が心に残っていました」。
そういった幼少期の思い出から、布目に色を入れたいと考えた。
▲父親の実家の工場で使われていた染物の型紙
その布目のついた陶器に描かれるのは、独特の線画だ。
「漠然としていますが風や空気、何かが宙に舞っているイメージを表現しています。空を飛ぶって憧れますよね。私自身が凧や紙飛行機も好きで、空を見上げると気持ちが軽やかになる。自分と同じようにそう感じてもらえるかなと作品に思いを込めています」。
▲空をイメージしたもののほか、海外の建築から着想を得たものも
今年からは、これまで以上に陶芸に集中していきたいという武田氏。
「今後は東京で個展を開きたいという思いがありますね。それも、やはり父がやっていたことなので、後追いをしているのかもしれません。きっかけは父なので、自然と。おそらくほかの家庭も、親が輝いて見えて作家になるのではないでしょうか。それが2代目の宿命かもしれません」。
▲武田敏彦 2000年より父・武田敏男に師事、陶芸を始める。2013年に東日本伝統工芸展 入選。茨城県陶芸美術館で開催の「笠間×益子 新世代のenergy」へ出品。2015年ルーシー・リー展記念コンテスト 最優秀賞受賞。そのほか受賞歴多数。
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Text: Mihoko Matsui
Photo: Yu Yanobu
Structure: Sachika Nagakane